みなさん、こんにちは。
2001年、25歳の時にタイで起業した前田千文です。
「女社長の海外起業と経営と日常生活を語るブログ」にご訪問頂きありがとうございます。
このブログにたどり着いたというあなたは
外国や海外での起業、 もしくは海外に住んでみたい…など
どんな理由があるかはわかりませんが、
海外に興味があり、かつ、いつかは起業してみたいという方なのではないかと思います。
今日は、日本人通訳者と雇用契約か業務委託かで揉めた話をしたいと思います。
タイ大洪水と通訳者Aさんの招へい
タイ大洪水の影響と通訳者Aさんの招へい背景
話は2011年に遡ります。
皆さんの記憶にもあるかもしれませんが、
タイでは大洪水が発生し、多くの日系企業が被災しました・・・
私の会社は部門の1つとして通訳者を各企業へ派遣する仕事をしています。
それで工場のヘルプ要員として通訳が必要となり、
タイ国内のみならず周辺諸国、そして日本からも通訳を招聘しました。
タイ国外から呼び寄せた通訳の一人に、
日本に在住しているAさんという方がおりました。
まず通訳者ですが「通訳と言う仕事をしている個人事業主」という立場のため
私の会社と業務委託契約を交わします。
フリーランスで活躍されている方もいれば、法人化して活躍されている方もおります。
またお支払いする対価も高いため、業務委託という形式をとるのが一般的です。
ただ、このAさんからこのように聞かれます…。
前田さんの会社と雇用契約書を交わすんですよね?
また、タイでは働く際に労働許可証が必要なんですよね?
わたしは、このように答えました。
タイの場合は、労働者保護法という法律があります。
ただAさんの場合は、労働者ではありませんから
私の会社とは雇用契約ではなく
業務委託契約を交わすことになるのですが…。
また、今回の業務は労働許可証の取得の必要はなく
“儀礼ビザ”というものを取得します。
(注釈)洪水が発生した後、復旧要員として来タイする外国人には特例でビザが発給されました。
それが儀礼ビザで、一時的に労働許可証なしで就労が出来ました。
タイで働くことには変わりませんから
私は“労働者”ですよね?
雇用契約を締結したいです。
このようなやり取りが何度か続きます。
何度説明しても話がかみ合いません…
危険だと思ったので、
今回の話はなかったことにして欲しいです。
何度も説明し、業務委託契約の雛形も開示しましたが、
実際にAさんと電話で話すと
と言うのですが、
その後メールで確認すると、上記のようなやり取りが何度も続きます…。
実際は洪水で被災した企業で通訳の業務を行うことになるのですが
当初受け入れを予定していたX社には、
契約で相違があるので別の通訳者を派遣します。
とお伝えしたところ
との返事…。
それで、Aさんはタイに来ることになったのです。
そして…
ビザ申請のために東京のタイ大使館へ行くのですが
台風で飛行機が欠航…電車も動かない…ビザの申請を別の日に…。
改めてビザ申請に向かうものの濃霧で飛行機が欠航…
2度もビザ申請の予定日にキャンセルになります…(虫の知らせ?)
なんとかビザを申請し、
当初予定をしていたビザ取得日より1ヶ月遅れでビザの取得…
そして・・・とうとう・・・
当初の予定を2ヶ月超えて、Aさんはタイの地を踏むことになるのです…。
この日から約2年半に渡り、私はAさんの対応に苦慮することになるのです…
通訳者Aさんが来タイ~トラブルの始まり
来タイまで、ビザの申請が2度に渡りキャンセルになったAさん…
数あるトラブルを乗り越えてタイに降り立ちます。
通訳者Aさんの待遇と契約内容
今回、Aさんを日本から呼び寄せた…ということで、
以下の費用は全て当方が負担しました。
通訳料も、ウン十万バーツ…。
かなりの高待遇で来ていただきました。
契約解除の背景:Aさんの能力不足
これだけの高条件ですので、当然ながら「仕事も出来る」という前提です。
契約期間は3ヶ月です。
来タイ後、2ヶ月…。派遣先のX社からクレームが相次ぎました。
当社の仕事を行うだけのレベルに達していません。
日本からの出張者の部屋の前で立っています。
挙動不審で怖いです。
毎日、クレームの連絡を頂き
そのたびにX社へ向かうという日々が続きました。
そして…
とうとう契約期限の3ヶ月を待たずに、
1か月を残して契約を解除されてしまいます。
未署名の業務委託契約とその影響
Aさんは業務委託契約書にサインをしないままタイに来てしまい
タイに来た後も
とはぐらかされ、双方がサインをしないまま
月末に契約解除となってしまいました。
給料不払いによるタイ労働局への訴え
Aさんの通訳料は月末締めの翌月15日払い…
なので、お仕事が完了後に15日空いてしまいます。
(1日~15日間の空白の期間が出ます)
月末で契約を解除され、通訳料は15日後に日本の口座に振り込まれるはずが…
最後の出勤日の次の日に…
当社を、給料不払いで労働局に訴えたのです。
労働局に当社から電話が掛かってきます。
あなたの会社が「給料を支払っていない」と相談に来ています。
事情を伺いたいので、明日9:00に労働局まで来てください。
俗に言う、出頭命令です。
このとき、私は出張中で日本に滞在しており、Aさんもこの事実は知っていました。
労働局のお呼び出しなので行かなければいけませんが
私はいないので、変わりにN部長、弁護士に行ってもらいました。
そして、次の日を迎えます…
労働局での対立:Aさん、N部長、弁護士の対峙
労働局で担当官を仲裁役とし、Aさんと当社のそれぞれの言い分を聞きます。
Aさんの契約条件は、月末締めの翌15日払いなので
月末には支払われません。
来月の15日に支払われます。
労働者への労働対価である給料は、
1ヶ月に最低1回、速やかに払う必要があります。
支払までの期間が15日というのは長いのではないでしょうか?
業務委託契約に則ってタイに来ています。
ビザも儀礼ビザです。
委託料である通訳料も含めた支払条件も納得しています。
(契約内容を見せる)
但し、Aさん本人が「労働者」と言っている以上は、
労働者として話を伺います。
ただ…本人の要求は、今月分の給料の支払いですので
給料が支払われ、金銭を受領すれば問題がないという認識です。
Aさん、お金を受領できれば問題がないですね。
明日の9時に再度労働局に来てください。
御社は明日9:00に今月分の労働対価をAさんに支払うこと。
Aさん…給料を明日受領する、と言うことでいいですね?
そして、担当官を証人とし、Aさん、N部長、弁護士…と、
そこにいた全員が調書にサインをします。
そして次の日に再度労働局へ…
現金で、その月の通訳料である数十万バーツを支払います。
Aさんはそれを受領します。
受領の際に、担当官を証人とし調書にサインをします。
これで、この件は終了しました。
Aさんはお金を受領後、すぐに日本に帰国しました。
・・・が、日本に帰った後…Aさんはある行動を起こすのです…。
Aさんの日本帰国後の行動:手紙と電話が頻発
Aさんが日本に帰国後、数ヶ月が経過しました。
X社から、こんな相談を受けます…
日本の本社に電話して困っています。
「自分はX社のタイ法人で働いていて解雇されて
それは不当解雇なので損害賠償金を払え」
と言っているようなのです。
そして同時に…
東京にあるタイ大使館に当時首相だったインラック首相宛に手紙を送ります。
内容は判りませんが
おそらく不当に解雇された…などでしょう…
当社は、また事実関係の調査のために労働局に呼ばれます…
労働局に行ったところ…
この件はもう終わっているのに…。
もしAさんが、今回の件で裁判を起こしたいなら
タイに来なければいけないけど、
もう調書にサインをして、すでに終わったことだから訴訟には発展しないけど…
そして、当社にも手紙が届きます…
件名:休業補償手当請求
労働者としての仕事を奪われ、その精神苦痛と休業した分を…
労働局へアドバイスをもらうために伺います。
そうしたところ…
放置するしかない…
Aさんにお返事します…
A 様
貴殿の「休業補償手当請求書」を20xx年x月x日に受領しました。
貴殿はこの請求書を日本国の労働基準法に基づいて作成された旨、記されています。
しかし、タイ国内の法人である弊社との契約に基づく業務は、
日本の労働基準法等の労働関係諸法令は原則、適用されません。
「法の適用に関する通則法」により、タイ国内の業務に関する事項は、
タイ国の諸法令に準拠することになります。
20xx年x月xx日にタイ国労働局で行われた調書作成と、
弊社の金銭支払いにより、貴殿の本件に関する取り扱いは、正当に終了しました。
従って、弊社は貴殿の請求に応じる義務はありません。
(中略)
本書を受け取り後も、貴殿がこの警告を無視するような行為を行えば、
当方としては、断固として法的手段を講じます。
今後も弊社およびX社、同社本社、
タイ労働当局をはじめタイ国行政機関等に文書送付、電話等の行為を続けるなら、
日本国、タイ国の双方で、弊社が警察および検察に告発し、
合わせて刑事上・民事上の法的措置を執ります。
しかし、この手紙をAさんが受領後…
X社に対する電話…
タイの労働局への文書の送付…
在京タイ大使館あてへの文書送付が
より激しさをますことになりました…。
X社の法務担当者のタイ訪問と調査
Aさんはその後、「労働局」と付く役所全てに書状を送付します。
労働局としては書状を受領した以上、
証拠取り調べとして、書状に記載されている会社である
当社とX社に事実関係を確認しなければなりません。
労働局の支所に書状が届くたびにX社と当社が呼び出されます。
部署ごとに担当官が変わるため
その度に、何度も…何度も…同じ説明を繰り返し、
担当官は調書を作成し…本当に疲労困憊でした…。
そんなある日、X社の担当者から
とお呼び出しが掛かります…
そこで…
前田さん、何とかなりませんかね…
ホント、業務妨害です…
本社にも、手紙が届いたり
個人を誹謗中傷するような事も書いてあります。
電話も、毎日掛かってきます。
本社だけでなく、
大阪支社、福岡支社などにも掛かってきます。
全て録音してますが、ホント困ってるんです。
今までの経緯を最初からご説明いただけませんか?
私のほうからは
X社の本社から来た法務担当者に
Aさんがタイに来ることになった経緯から今日までのことを説明しました。
弁護士事務所での法的相談
仕事柄、法律事務所とお付き合いがあるので
この件で相談したところ
こういったケースは残念ですが、無視が一番ですね…
私が関わった案件では8年掛かった…
というケースもあります。
ただ、X社さんで営業妨害を証明できるならば
訴え出ると言う方法もありますね…
電話を録音していると言うのであれば
それが証拠になりますから…
相手も明確に判っていることですし…
このことをX社に伝えます…
しばらくの沈黙の後…
当社としても、このまま妨害行為を
受け続けるつもりはありませんので
何らかの措置を講じることにしましょう…
実際にX社が何かをやったかまでは判りませんが
この打合せから2週間後に、
ピタッ…とAさんからのコンタクトがなくなりました。
トラブルの結末と教訓
あれから数年が経ちますが、
このAさんの対応に2年以上の月日を要しました。
労働局に出した証拠書類の枚数は100ページにも上ります。
今になって思うと…最初からつまづいていたので
無理に進めなければ良かったのかもしれません…
またこの件で、当社の信用は失墜し
会社として大きなダメージを残したのは言うまでもありません。
X社とは、この件を境に取引がなくなってしまいました。
私の経験が、皆様のお役に立てれば幸いです。
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